新興感染症って?
「歯科診療における院内感染防止対策施設基準」が見直された一文に「新興感染症に対する対策等の院内研修等を実施している」こと。
改めて「新興感染症」について記します。
18世紀以降、ワクチンの開発や抗生物質の発見により、感染症の予防・治療方法が飛躍的に進歩した。ワクチンによる予防効果は劇的であり、1980(昭和55)年には世界保健機関(World Health Organization:WHO)による天然痘の根絶宣言という人類にとっての金字塔が打ち立てられるなど、一時は感染症はもはや脅威ではあり続けないと思われていた。
しかし、それと前後して、1976(昭和51)年にエボラ出血熱、1981(昭和56)年に後天性免疫不全症候群(Acquired Immunodeficiency Syndrome:AIDS、エイズ)が出現するなど、ここ30年の間に少なくとも30の感染症が新たに発見されている。これらを新興感染症といい、21世紀に入ってからも、2003(平成15)年には重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome:SARS、サーズ)や2012(平成24)年には中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory Syndrome:MERS、マーズ)が出現し、また、高病原性鳥インフルエンザウイルス(A/H5亜型やA/H7亜型)や新型インフルエンザウイルスなどの流行が発生している。
また、結核、マラリアなど古くからある感染症の中には、近い将来克服されると考えられていたものの再び流行する傾向が出ている感染症がある。これらを再興感染症といい、近年アメリカにおいて急速に発生地域が拡大しているウエストナイル熱を始めとして、様々な感染症が再び脅威となりつつある。このように、感染症の脅威は大きくなってきている状況にある(注1)。
我が国においても、感染症対策は引き続き重要な位置を占めており、最新の知見に基づき、科学的な根拠に基づいた予防・治療・まん延防止策を講ずる必要がある。
(注1) WHOの報告書によると、2000年には、エイズ、結核及びマラリアの3つの感染症によって世界で600万人以上が死亡したと報告されている。
厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/04/dl/1-2.pdf